犬の困った、ワン!ポイントアドバイス—⑫

叱らない方がしつけは効率的
「でも、叱るべき時にはちゃんと叱らないとダメに決まっている」
犬に関する様々なことを、雑誌やネットなどを通じて語らせてもらってきて、
ときどきその話(記事)がネットニュースで取り上げられます。
「叱ることは百害あって一理なし」
「叱るという行為を排除しても、しつけはできる」
冒頭の1行「でも、叱るべき時にはちゃんと叱らないとダメに決まっている」は、
「叱ること」に関する記事に対して必ずといっていいほど、書き込まれるコメントです。
「叱る行為で効果が期待できるのは限られた条件が満たされている場合のみ」や
「叱る行為には弊害が伴う」
といった、学習の心理学や行動分析学などによって
明らかにされているその根拠を記事の中では記しているにもかかわらず、です。
あらゆる角度から、どんなに説明しても「でも、・・・・・・」と返ってくる。
いやはやどうしたものか、と常に思案に暮れるばかりですが、
「でも、・・・・・・」に対して、新たな説明の切り口と出会えたので、今回はそのお話を。

(人間の子育てに関しては特に)。
しつけとは叱ることではなく、好ましい行動を教えること。
叱ることではそれは難しい。
報酬と罰
私のトレーニング手法は、
動物がどう行動を獲得し習慣化していくかを科学的に解き明かしている、
学習心理学や行動分析学の理論に基づいています。
その理論の中で中核を成すのは、「オペラント条件付け」です。
中身は当コラムですでに取り上げている、
行動の結果によりその行動の頻度が増減していく、ということに関するもの。
結果的にいいことが起きる行動の頻度は増える、
結果的に嫌なことが起きる行動の頻度は減る、
結果的にいいことがなくなる行動の頻度は減る、
結果的にいいことがなくなる行動の頻度は減る、
過去のコラム内で紹介している、あれです。
「いいこと」「嫌なこと」という文言は、専門書的なものには出てきません。
出てくるのは「報酬」「罰」という言い方や「強化子」「弱化子」、あるいは「好子」「嫌子」などです。
さて、話はここからです。
①報酬のみ
②罰のみ
③報酬と罰との併用
どれが一番効率的かつ効果的かを明確に記した話があったのです。

「効果的な強さ」「必ず」「即座」
という条件が満たされないと効果は期待できない。
さらには「逃避行動」「攻撃行動」
「無気力」といった弊害を生み出す可能性も。
脳の研究者のお話から
池谷裕二氏。脳の研究者として著名な人物です。
行動は、多くの場合、脳の反応とも言えます。
であれば、行動を理解するには脳に関する知見も必要。
そうした理由から、私は脳に関する書籍も好きでして、池谷氏の著書には、一度目を通すようにしています。
そして、彼の著書の中に、
①報酬のみ、②罰のみ、 ③報酬と罰との併用、に関する話が登場しているのです。
ネズミに迷路を覚えさせるときに、
①できたら報酬(餌)を与える
②できなかったら罰(電気ショックなど)を与える
③さらにこの2つを組み合わせる。
さて、この3つの方法のうち、ネズミが最も早く迷路を覚えるのはどれか。
当コラム冒頭の「叱る時にはちゃんと叱らないとダメに決まっている」というのは、③の報酬と罰との併用、です。
果たして、報酬と罰との併用が、一番だったのか

という話が出ていた池谷氏の著書。
子育ての本だと思ったからだろうか、
なぜかすぐに手にはしなかった。目を通したのは最近。
報酬と罰との併用は効果的か
まぁ、私が取り上げている話だから、どうせ③はないな、と推察される方がほとんどでしょう。
その通りです。
答えは、①>③>②となるそうです。
好ましい行動に報酬を与えるだけ、
ほめるだけ、
好ましい行動にいいことを提供するだけ、
という方法が最も効果的だということなのです。
そしてこうも記されていました。
「叱ると、タスクをこなそうとするやる気自体が減じてしまい、結果的に達成率が下がってしまいます」と。

好ましい行動を犬に教えることはできない。
叱らないでそれを実現するためには、そのための方法を飼い主が学ぶ必要がある。
叱るべき時にはちゃんと叱らないとダメ」
これは人間の子育てでよく耳にする文言です。
時として、その方が効果的な場面もあるかもしれません(人間の場合は、です)。
ただ、それは言葉(言っている内容)がわかることが前提となります。
なぜなら、言っている内容が理解できなければ、なぜ叱られたかを理解できないからです。
言っている内容を理解できなければ、どうすればいいかを理解できないからです。
残念ながら、犬は我々のように会話を理解できる能力(脳力?)を持っていません。
我々がいくら言葉で説明しても、犬はなぜ叱られたかを理解できない、
どうすればいいかを理解できない、そういうことなのです。
さて、ここまでのお話いかがでしたか? それでも「でも、・・・・・・」とお考えになりますか?
さて、長きにわたり掲載いたしました「しつけ情報」ですが今回の⑫を持ちまして終了となります。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
皆様の愛犬との暮らしや、しつけ、接し方のヒントになれていたならば幸いです。
しつけ情報はこれで一区切りとなりますが、ドッグパスを今後ともよろしくお願いいたします。
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